介護施設の食事提供方法、直営・委託・配食を徹底比較!
- みんなの給食株式会社
- 7月24日
- 読了時間: 16分

▶︎1. 介護施設の食事提供方法とは?

1.1 食事提供が介護施設で重要な理由
介護施設において、食事は単なる栄養補給ではありません。 日々の楽しみや生活の質にも深く関わる、大切な要素です。
高齢者にとって、食事は生活の中でもっとも楽しみにされる時間のひとつです。 そのため、食事提供の質が入居者満足度に直結するといっても過言ではありません。
食事が果たす3つの役割
介護施設での食事は、以下のようにさまざまな役割を担っています。
栄養補給と健康維持
高齢になると食が細くなり、栄養が偏りやすくなります。 管理栄養士によるバランスのとれたメニューが必要不可欠です。
日課としてのリズム形成
朝・昼・夕と決まった時間に食事をとることで、生活にリズムが生まれます。 認知機能や体調管理にもつながります。
コミュニケーションの場
他の入居者やスタッフとの会話が生まれる時間でもあります。 孤独感の軽減や精神面での安定に役立ちます。
よくある失敗例と改善のポイント
以下のような失敗例も多く見られます。
メニューが単調で飽きられてしまう
→週ごとのイベント食や季節メニューを取り入れると、食事の楽しみが増します。
食形態の個別対応が不足している
→咀嚼・嚥下の状態に合わせて、きざみ・ミキサー・ソフト食などを準備しましょう。
食事時間が作業的になっている
→「配る・片付ける」だけでなく、会話や雰囲気作りも大事にすると満足度が変わります。
食事の質が生活全体に与える影響
たとえば、朝食をしっかり食べた日は、その後の活動意欲が高まる傾向があります。 逆に、食が進まない日は、体調を崩しやすくなるという声も多く聞かれます。
さらに、咀嚼や飲み込みに配慮した食事は誤嚥リスクの軽減にもつながり、医療的な事故の防止にも役立ちます。
食事は「介護の一環」ではなく、「生活支援の中心」として考えることが大事です。 だからこそ、提供方法をどう選ぶかが、施設運営において非常に重要な判断になるのです。
1.2 食事提供の主な方法は3つ
介護施設での食事提供には、いくつかの方式があります。 施設の規模や人員体制、設備状況などに応じて選ぶ必要があります。
現在、介護施設で主に採用されている食事提供方法は3つです。 それぞれの特徴を理解することで、自施設に合った方式を選びやすくなります。
直営方式(自前調理)
施設内に厨房を設け、スタッフが自前で調理を行う方式です。
メニューや食材の選定に柔軟性がある
利用者一人ひとりに合った調理対応がしやすい
施設内で完結するため衛生管理も自主管理できる
一方で、調理スタッフの確保や衛生管理、厨房設備の維持など、運営コストや手間が大きいのが課題です。
委託方式(給食業者委託)
食事の調理・提供業務を専門の給食業者に委託する方式です。
専門的なノウハウが活用できる
食品衛生や栄養管理体制が整っている
人員不足や業務の属人化リスクを軽減できる
業者選定によって提供品質やコストに差が出るため、契約内容の確認と業者選びが重要になります。
配食サービス利用
外部業者から調理済みの食事を配達してもらう方式です。
調理設備や専門スタッフが不要
小規模施設や短期利用に向いている
急な対応や緊急時でも柔軟に使える
ただし、温度管理や食事形態の制限がある場合があるため、事前確認が必要です。
方式選定のカギは「施設の目的と体制」
3つの方式にはそれぞれ強みと弱点があります。 以下のような点を整理しておくと、方式選定がスムーズです。
厨房設備はあるか?調理スタッフを確保できるか?
食形態の多様な対応が求められるか?
コストや運営体制にどこまで余裕があるか?
自施設の規模や入居者のニーズを踏まえて、最適な提供方法を選ぶことが大切です。
▶︎2. 直営方式(自前調理)の特徴と課題

2.1 直営方式のメリットと選ばれる理由
直営方式は、施設内に厨房を設置し、スタッフが調理から提供までを担うスタイルです。 手間はかかりますが、柔軟性と個別対応の面で高く評価されています。
とくに、利用者一人ひとりに合わせた食事を大切にしたい施設では、直営方式が選ばれることが多いです。
利用者の状態に応じた柔軟な対応が可能
直営調理では、現場のスタッフが直接食材や調理工程を管理できるため、 利用者ごとの体調や嗜好、咀嚼・嚥下の状態に合わせた調整がしやすいのが強みです。
一部だけを刻み食に変更
好みに応じて味付けを変更
体調不良時におかゆへ即時対応 など
配食や委託方式では難しい、その日の状態に合わせた対応ができるのは直営ならではです。
食材・献立の自由度が高い
献立作成や食材選定を自施設で行うため、地域の特産物を取り入れたり、 季節行事にあわせた特別メニューを盛り込んだりするなど、食事に「楽しさ」や「季節感」を出しやすいのも魅力です。
イベント食や郷土料理などを積極的に取り入れることで、食事時間の満足度もぐっと高まります。
スタッフと入居者の距離が近くなる
調理スタッフが現場にいることで、配膳や食後の会話などを通じて入居者との距離が近くなります。 食事への要望や不満があってもすぐに反映しやすく、サービスの改善サイクルを回しやすいという利点もあります。
こんな施設では特におすすめ
以下のような施設では、直営方式の強みが活きやすいです。
利用者の介護度に幅がある
食形態の個別対応が多い
地域密着型の施設運営を目指している
食事で入居者満足度を高めたい
直営方式はコストや人員面の負担がある反面、「温かい食事」と「手作りの安心感」が大きな魅力です。
2.2 よくある課題とその解決策
直営方式には多くのメリットがありますが、運用面ではいくつかの共通した課題もあります。 うまく活用するには、現場で直面しがちな問題を把握し、事前に対策を立てておくことが大切です。
ここでは、直営方式で特に多い3つの課題と、それぞれの解決策を紹介します。
課題①:人材確保が難しい
調理師や栄養士といった専門職の確保が難しいという声は非常に多く聞かれます。 特に地方や小規模施設では、人員の確保自体が大きな壁になります。
【解決策】
地元の調理師学校と連携する
時短勤務やシフト柔軟化で働きやすい環境を整備
一部業務だけ委託する「部分委託」も選択肢に
課題②:衛生管理に手間がかかる
厨房が施設内にあるため、日常的な衛生管理やHACCP対応などがすべて施設責任となります。 食中毒リスクもあるため、マニュアル整備や徹底した教育が求められます。
【解決策】
定期的な衛生研修の実施
外部コンサルやチェックリストを導入して管理レベルを標準化
施設長も衛生管理の基本を理解しておく
課題③:食材費やロスの管理が難しい
在庫管理や仕入れのコントロールが不十分だと、食材の無駄やコストの上昇につながります。 特に物価が上昇している今、無駄なロスは避けたいところです。
【解決策】
食材発注は週単位で見直し、数量を最適化
食材ロスを記録・分析し、メニューに反映
小分け食材や下処理済み食材の活用で時短と廃棄を防止
トラブルを「見える化」して先手を打つ
これらの課題は、多くの施設が共通して抱えているものです。 定期的に厨房業務の棚卸しを行い、課題を「見える化」することで、 大きなトラブルに発展する前に改善策を講じることができます。
直営方式の成功には、スタッフの負担軽減と厨房運営の効率化がカギになります。
2.3 こんな場面では委託や配食も検討を
直営方式には多くの利点がありますが、すべての施設に最適とは限りません。 運営環境や人材状況、コストの観点から、外部リソースを活用したほうが適している場面も少なくありません。
ここでは、委託方式や配食サービスの検討が有効な3つのケースを紹介します。
ケース①:厨房スタッフの確保が長期的に困難な場合
高齢化や人手不足の影響で、調理職員の採用や定着が難しい地域もあります。 シフトが組めない、欠員が出るたびに対応が回らないといった問題が慢性化している場合は、委託や配食への切り替えで安定運営が可能になります。
【ポイント】
部分的な委託から試すことでスムーズな移行が可能
突発的な欠勤にも対応できる体制が整いやすい
ケース②:厨房設備が老朽化している
厨房の設備が古くなり、修理や入れ替えに多額のコストがかかるような場合、 あえて新設せずに配食サービスで調理業務そのものを外部に委ねるという選択肢も現実的です。
【ポイント】
高額な厨房投資を回避できる
食品衛生の最新基準にも対応しやすくなる
ケース③:多様な食形態や個別対応が難しい
利用者の嚥下機能や健康状態により、常食・軟菜・ミキサーなど複数の食形態が必要なケースもあります。 こうした対応をすべて直営で行うには、人手も知識も必要です。 個別対応が可能な専門業者や配食サービスを活用することで、負担を軽減できます。
【ポイント】
専門スタッフの知識や設備を活かせる
クレームや誤配のリスクも軽減される
柔軟な発想で施設運営を最適化する
「直営でなければならない」と思い込まず、柔軟な方式の組み合わせで運営することが大切です。 朝食は配食、昼と夕食は直営など、時間帯ごとの使い分けも選択肢になります。
施設の目的や課題に合わせて、提供方式を柔軟に選ぶことが、安定運営の第一歩です。
▶︎3. 委託方式(給食業者委託)の特徴と注意点

3.1 委託方式の流れとメリット
委託方式とは、調理や配膳などの食事提供業務を、給食会社などの外部業者に任せる方法です。 多忙な施設運営をサポートし、人手不足や専門性の不足を補える手段として広く活用されています。
ここでは、委託方式の基本的な流れと、導入によって得られる主なメリットを見ていきます。
委託方式の基本的な流れ
一般的な委託方式では、以下のようなステップで業務が進行します。
打ち合わせ・業務内容の確認
提供回数や対応食形態、必要な人員数などをヒアリングしてもらいます。
現場確認・見積もり提出
厨房設備や配膳動線などを確認し、費用を算出。
契約・運用開始
スタッフ配置や献立作成、衛生管理までを委託先が担います。
運用中の連携
定期ミーティングやフィードバックを通じて、食事の質を改善していきます。
専門的なノウハウが活用できる
給食業者は、高齢者施設向けの献立作成や調理、衛生管理に精通しています。 直営では対応が難しい多彩な食形態(常食・ソフト・ムースなど)にも柔軟に対応でき、栄養バランスのとれた食事を安定して提供できます。
管理栄養士による献立設計
季節行事に合わせた特別食
嚥下障害への対応食 など
人件費の固定化と業務負担の軽減
調理スタッフの採用・教育・勤怠管理などを業者に任せることで、施設側の人件費と業務負担を大きく軽減できます。 特に、調理職員の入れ替わりが激しい施設にとっては、安定運用の大きな助けとなります。
衛生基準の徹底・事故リスクの低減
委託業者は、HACCPをはじめとする食品衛生基準を熟知しており、徹底した管理体制を構築しています。 直営でありがちな、記録ミスや対応漏れといったリスクも抑えられます。
現場の声に耳を傾ける運用がカギ
委託方式を成功させるには、業者との密なコミュニケーションが不可欠です。 「任せきり」ではなく、
「一緒に作る」意識が満足度を高めるコツです。
委託方式は、専門性・安定性・効率化の3拍子が揃った頼れる選択肢です。
3.2 業者選定で失敗しないためのポイント
委託方式の満足度は、業者選びで大きく変わります。 価格や実績だけで判断すると、現場でのミスマッチが起きやすくなります。
業者選定時のチェックポイント
対応可能な食形態の範囲を確認
嚥下食・アレルギー対応など施設のニーズに合っているか
スタッフ体制の質を見る
栄養士や調理師の関与度、現場対応力、研修制度の有無
費用とサービスのバランスを比較
見た目・味・イベント対応など、単価に含まれる内容を確認
緊急対応や災害時のサポート体制
欠員時の代替や備蓄対応ができるか
「安さ」よりも「長く付き合える信頼性」が業者選定のカギです。
3.3 委託と直営の費用比較と注意点
委託と直営では、コスト構成や見え方が大きく異なります。 数字だけで判断せず、運営負担や安定性も含めて比較することが大切です。
それぞれの費用の特徴
直営方式
人件費・食材費・厨房維持費など、すべてが施設負担。人材確保や設備投資が重荷になることも
委託方式
1食単価や月額固定などで費用が明確。人件費や管理負担も軽減される
よくある注意点
安価な委託は内容が限られていることがある
直営は人材不足や食材ロスでコストが変動しやすい
委託は業者との連携がスムーズでないと満足度が下がる
比較のポイントは「安さ」ではなく「総合的な安定運営」です。
▶︎4. 介護施設の食事提供における衛生・栄養・設備の管理
4.1 衛生管理で気をつけたいポイント
食事提供において、衛生管理は命に関わる最重要項目です。 高齢者は免疫力が低いため、軽微なミスでも集団感染につながるリスクがあります。
以下のポイントを押さえることが重要です。
衛生管理の主な注意点
手洗い・手袋の徹底
交差汚染防止のため、作業ごとに手洗いと手袋交換を実施
食材の温度管理
冷蔵・冷凍・加熱の温度基準を守り、適切に保管・調理する
器具や設備の消毒
調理器具・まな板・シンクなどは用途別に分け、定期的に消毒
HACCPの導入・記録管理
作業手順やチェック項目を可視化し、記録を残すことでミスを防止
衛生ルールは「形だけ」にならないよう、現場全体で共有・実行する体制づくりが大切です。
4.2 栄養バランスと個別対応の考え方
介護施設の食事は、高齢者の健康維持や病状管理に直結する重要な役割を担っています。 咀嚼力や体調の違いに応じた柔軟な対応も求められます。
栄養・個別対応の基本ポイント
三大栄養素のバランス確保
炭水化物・タンパク質・脂質をバランスよく含む献立が基本
ビタミン・ミネラルも意識
免疫力や骨の健康に関わる栄養素も欠かさず摂取できるよう設計
咀嚼・嚥下機能に合わせた調整
きざみ・ソフト・ミキサー食など、状態に応じた食形態を用意
食事制限やアレルギーへの対応
糖尿病・腎臓病などの食事制限、アレルゲン除去にも注意
栄養と個別対応は“画一的でない”ことが最も大事です。常に一人ひとりの状態を見ながら調整する姿勢が求められます。
4.3 食事提供に必要な設備と人員配置
安全で質の高い食事提供を行うには、適切な厨房設備と人員体制の確保が欠かせません。 どの方式を採用する場合でも、基本の環境整備は重要です。
主な設備・人員のチェックポイント
厨房設備
加熱調理機器、冷蔵・冷凍庫、換気設備、衛生区域の分離などを整備
配膳・下膳用カート
温冷配膳車などを使って適切な温度管理を維持
調理スタッフ
必要な人数・資格(調理師、食品衛生責任者)を確保
栄養士・管理栄養士
献立作成、栄養計算、健康状態のヒアリング対応などを担当
衛生管理担当者
HACCPや清掃、記録管理などのルールを徹底させる役割
必要な機器や人材は、施設の規模や提供方式によって変わります。業務効率と安全性のバランスを意識することが大切です。
▶︎5. 食事提供の費用構成と価格高騰の影響
5.1 食材費・人件費・設備費の内訳とは
介護施設の食事提供にかかる費用は、主に3つの要素(食材費・人件費・設備費)で構成されます。 コスト管理をするうえで、各項目の内訳を把握することが重要です。
主な費用構成とその特徴
食材費(約30〜40%)
主食、副菜、調味料などの購入費。季節や物価変動の影響を受けやすい
人件費(約40〜50%)
調理員・配膳員・栄養士の給与や社会保険料などが含まれる
設備費(約10〜20%)
厨房機器の導入・修繕、光熱費、消耗品など
その他
清掃・衛生資材、食器・トレーの更新、食事提供システム利用料など
施設ごとに比率は異なりますが、特に「人件費」と「食材費」が大きな割合を占めます。定期的な見直しがコスト管理のカギになります。
5.2 米価や原材料の高騰が与える影響
近年、米や野菜・油・調味料などの価格が上昇傾向にあり、介護施設の食事提供にも大きな影響を与えています。 限られた予算の中で栄養バランスと満足度を維持する工夫が求められます。
高騰の主な影響と課題
一人当たりの食材費が増加
1食あたりの材料費が上がり、月単位では数万円規模の負担増に
献立の見直しが必要になる
高価な食材を減らしたり、代替食材への切り替えが必要になるケースも
イベント食や行事食の回数が減少
費用抑制のため特別メニューを制限する施設もある
業者からの値上げ通知が増加
委託業者との契約更新時に価格改定が行われるケースが目立つ
コスト増は避けられない傾向ですが、影響を最小限に抑えるには事前のシミュレーションと計画的な献立設計が重要です。
5.3 コストを抑えつつ満足度を上げる工夫
食材価格の高騰が続く中でも、入居者の満足度を保ちながら費用をコントロールする工夫は十分可能です。 日々の運営にひと工夫加えることで、無理なくコスト削減ができます。
現場で実践できる工夫
旬の食材を活用
価格が安定していて栄養価も高く、彩りも良いため満足感が上がる
ボリュームの出る副菜を工夫 根菜や豆類などを活用し、満腹感を高めつつコストも抑える
食材のロスを最小限に
残食量の記録をつけて、献立や量を調整することで無駄を削減
冷凍・下処理済み食材の活用
調理時間を短縮し、光熱費や人件費の削減につなげる
行事食はメリハリを意識
日常のメニューはシンプルに、年数回のイベント食で満足度を高める
見た目や香り、盛り付けなどの“印象”を工夫することで、コスト以上の満足感を届けることができます。
▶︎6. まとめ
直営・委託・配食の3方式にはそれぞれ特長があり、施設の規模・人員体制・入居者ニーズによって適切な選択が異なります。 単にコストだけでなく、対応力や柔軟性も含めて比較することが大切です。
各方式の比較ポイント
直営方式 柔軟な個別対応が可能/人材確保や運営負担が大きい
委託方式 専門性が高く運営が安定/業者選定と契約管理が重要
配食サービス 設備不要・コスト管理しやすい/個別対応や行事食は制限されやすい
選定時のチェック項目
自施設に調理スタッフや設備があるか
食形態の多様な対応が求められるか
運営管理の余力がどれほどあるか
安定的に提供できる体制が整っているか
「誰が、どのように、どんな食事を提供するか」を具体的に描くことが、最適な方式選びの第一歩です。
▶︎介護施設の食事提供業務なら「みんなの給食」にお任せください。
介護現場での豊富な経験をもとに、直営・委託・配食いずれにも対応した献立サポートが可能です。
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